その日の朝は日射しが遮られ、僅かに暗かった。

 こんな夏に季節外れの朝霧が出ているのだろうか。

 

 暑さを忘れさせてくれる霧を期待して家を飛び出した君は、

目の前に揺らめく「それ」を見て驚愕したに違いない。

 

 人型の「それ」は、生ぬるくて気持ちの悪い蒸気を放ち、

 山を見上げるようにゆらゆらと動いていたのだ。

 

――いつものように暑く、いつものように騒がしい夏の山。

  彼女は人型の「それ」を見下ろしていた。

(非想天則公式サイト物語概要より転載)

Last-modified: 2011-01-13 (木) 00:00:00